静岡の中小企業を訪ねると、見積、請求、在庫、勤怠まで、一つのExcelマクロが何年も現場を支えていることがあります。きちんと動いているうちは頼れる道具ですが、作った人の異動やパソコンの入れ替えを境に、急に直せなくなる。よくある話です。
業務システムへの移行で先に見るべきなのは、画面の見た目ではありません。セルの奥に埋まった計算の根拠と、エラーになったときの逃がし方、そして担当者が無意識に補っている作業です。
「動く表」を眺めるだけでは仕様は拾えない
私が最初にお願いするのは、普段どおりの仕事を横で見せてもらうことです。完成したファイルだけ受け取っても、月初に前月分を複製する、特定の取引先だけ別表から数字を写す、といった手順は見えません。
清水の卸売業でも、焼津の加工業でも、同じ名前の「売上集計」が同じ仕事とは限りません。入力から出力までを一本の流れにし、誰が、いつ、何を見て操作するのかを書き出します。マクロのボタンを押す前後の手作業までが仕様です。
計算式は「式」ではなく判断の順番で残す
たとえば請求額が「数量×単価」だけに見えても、実際には得意先別の単価、締め日、端数処理、返品、値引きが重なります。システム側へ数式を写すだけでは足りません。なぜその式になるのかを、日本語で説明できる状態にします。
計算台帳に最低限入れたい項目
- 入力値 数量や単価を誰がどこから入れるか
- 計算条件 得意先、商品、日付などで分岐する条件
- 丸め方 切り捨て、切り上げ、四捨五入を行う単位
- 計算の順序 明細単位か、合計後か
- 根拠 社内ルール、契約、過去の運用のどれによるか
特に端数は要注意。明細ごとに丸める場合と、月末の合計で丸める場合では結果が変わります。差額が小さくても、毎月、全取引先へ積み上がれば確認作業が増えるため、現行ファイルの実データで照合します。
エラーを消す処理に、現場の例外が隠れている
「空欄ならゼロ」「見つからなければ前回値」といった処理は便利ですが、移行時には危険信号です。本当は商品コード未登録なのにゼロで通している、担当者が後から修正している可能性があるからです。
例外は発生条件だけでなく、発見方法と処置まで一組で記録します。たとえば「締め後に返品が来たら翌月へ回す」「同名の商品があれば型番で照合する」「取込件数が合わなければ元データへ戻る」。ここまで書いて初めて、新しい仕組みに置き換えられます。
- 過去3〜6か月を目安に、修正履歴や手書きメモを集める
- 担当者へ「いつもと違った日」を聞く
- 例外を止めるもの、警告するもの、承認後に通すものへ分ける
- 誰が直したか残る履歴の要否を決める
担当者の頭の中も、業務フローの一部
藤枝の店舗で話を聞くと、「このお客様は前回と同じ扱い」「雨の日は翌営業日に回す」など、ファイルの外にある判断が出てくることがあります。引き継ぎ資料にはなくても、現場では毎週使われているルール。ここが属人業務です。
聞き取りでは「何をしていますか」だけで終えず、「迷ったときに誰へ聞くか」「不在なら止まるか」「元に戻せるか」まで確かめます。操作画面の録画や、実際に使った帳票の控えも役立ちます。ただし個人情報を含む資料は、保存場所と閲覧者を先に決めておく必要があります。
一斉切替より、同じ結果が出る期間をつくる
棚卸し後は、現行のExcelと新しいシステムを一定期間並行して動かします。期間は締め処理を一巡できる1〜2か月が一般的な目安ですが、繁忙期や年次処理がある業務では長めに見ます。
照合するのは最終合計だけではありません。明細件数、端数、例外件数、処理時刻まで比べると、違いの原因を追いやすくなります。差が出たら新旧どちらが正しいかを業務ルールへ戻って判断する。Excelに合わせること自体を正解にしないのが肝です。
全部を自動化する必要もありません。年に一度しかない処理なら、承認付きの手入力を残した方が費用と保守の負担を抑えられる場合があります。頻度、ミス時の影響、作業時間を並べ、どこまで仕組みに任せるかを経営判断に落とします。
今のExcelを見ながら、移行範囲を一緒に整理します
NIR株式会社では、静岡の現場で使われているファイルを確認し、残す業務、直す業務、自動化する業務を切り分けています。まだ発注を決めていない段階でも構いません。担当者が退職してから慌てる前に、まずは現状の棚卸しから。システム導入・開発を無料で相談するよりご相談ください。