静岡の中小企業から業務システムの相談を受けると、よく出てくるのが「見積はExcel、受注は紙、請求は経理担当の表」という状態です。長く回ってきた方法なので、悪いと決めつける必要はありません。
ただ、そのまま画面に置き換えると、二重入力や確認待ちまでシステムの中に残ります。私が現場で最初に見るのは機能の多さではなく、一件の仕事がどこから始まり、誰の確認で次へ進むかです。
まず一件の仕事を、入口から入金確認まで追う
会議室で理想の流れを描くより、実際の案件を一件選び、使った紙とファイルを机に並べるほうが早いです。静岡市内の工事業なら電話で依頼を受け、現地確認、見積提出、口頭の了承、工事、請求という流れがよくあります。一方、焼津や藤枝の卸売業では、得意先から届いた注文書を見ながら販売管理用の表へ転記することもあります。
直近三か月から、通常案件と例外案件を合わせて二十件から三十件ほど見るのが目安です。値引き、追加作業、分納、取り消しが入った案件も外せません。きれいな案件だけで設計すると、運用開始後に手書きメモが復活します。
案件ごとに記録すること
- 依頼が来た方法と、最初に受けた人
- 見積を作るために参照した資料
- 社内確認が必要になる金額や条件
- 受注と判断した証拠や連絡
- 請求を出せる条件と、入金を確かめる担当
顧客名と金額だけでは、あとで検索できない
システムへ持たせる項目は、現在の見積書だけを見て決めないこと。たとえば同じ苗字のお客様、同じ会社の複数拠点、担当者変更があると、名称だけでは過去案件を正しく探せません。顧客番号、会社名、拠点名、担当者、住所、連絡先を分けるか、現場に合わせて決めます。
商品や作業の名称も同じです。「一式」を便利に使いすぎると、前年との原価比較や再見積ができません。ただし細かくしすぎれば入力が重くなる。よく使う明細は選択式、現場固有の内容は自由入力にするなど、速さとの折り合いが必要です。
先に統一したい基本ルール
- 見積番号と請求番号の付け方
- 税率、端数処理、値引きの扱い
- 支払期限と締め日の決め方
- 見積の版を更新したときの残し方
- 図面や写真をどの案件に結び付けるか
「受注済み」の意味を社内で一つにする
営業担当は口頭了承で受注、経理担当は注文書の到着で受注、と考えていることがあります。ここが曖昧なままでは、受注一覧の数字を経営判断に使えません。
現場では、見積作成中、提出済み、条件調整中、受注、失注、保留といった状態を使います。名称を増やす前に、「誰が」「何を確認したら」「どの状態へ変えるか」を文章にします。たとえば注文書がない取引では、了承メールや通話記録を案件に残す。担当者の記憶だけに置かない運用です。
値引き承認も整理どころ。金額だけでなく、粗利率、支払条件、納期の短さで確認が必要になる会社もあります。承認者が不在のときの代行者と、差し戻した理由の記録まで決めておくと、処理が止まりにくくなります。
請求書を出す条件は、取引先ごとの差まで洗う
請求業務で詰まりやすいのは、書式より締め方です。納品時に全額を請求するのか、着手時と完了時に分けるのか。複数案件を月末に合算する取引先もあれば、現場ごとの発行を求める取引先もあります。
請求先と納品先が違う、担当部署ごとに宛名が変わる、指定の注文番号がないと受け付けてもらえない。こうした条件を顧客情報へ持たせると、担当者が替わっても抜けにくくなります。入金確認後に誰が消し込み、差額や振込名義の違いをどう扱うかも、請求書を作る前の工程として決めます。
請求漏れを見つけるには、受注済みなのに請求未作成、作業完了なのに完了日未入力、といった条件で一覧を出せる設計が実用的です。警告を増やしすぎると誰も見なくなるので、経営上止めたいものから絞ります。
移行は全社一斉より、小さな範囲で並行運用
古いExcelを全部きれいにしてから始めようとすると、なかなか動きません。現在進行中の案件、今後も再注文がありそうな顧客、未入金の請求を優先し、古い記録は検索用に保管する方法もあります。移す対象と保管する対象の線引きが先です。
最初は一部署または一業務で、二週間から四週間ほど並行運用するのが一般的な目安。入力にかかった時間、二重入力の回数、請求漏れ、差し戻し件数を開始前後で測ります。慣れたかどうかという感想だけでなく、数字で直す場所を決めるためです。
閲覧できる人、金額を直せる人、承認できる人も分けます。退職者の利用停止、データのバックアップ、障害時に紙へ戻す手順まで決めて、ようやく日常業務として使えます。作って終わりではなく、実際の使われ方を見て項目や画面を削る作業も欠かせません。
自社の流れに合う整理から相談できます
NIR株式会社では、静岡市駿河区を拠点に、今使っている見積書や管理表を拝見しながら、残す作業と変える作業を切り分けています。製品を先に決める相談でなくても構いません。社内で整理しきれない箇所があれば、システム導入・開発を無料で相談するから、現状の困り事を一つだけお聞かせください。