静岡市の中小企業で業務を見せてもらうと、管理表が部門ごとに分かれている場面をよく見かけます。見積は営業担当のExcel。受注は事務所の共有表。請求は経理の別ファイルです。普段は回っていても、月末に数量や宛名が食い違うと、電話や紙をたどる作業が始まります。
私が一元化の相談で先に集めるのは、きれいに完了した案件より『いつもと違った案件』です。例外を後回しにすると、新しいシステムへ移した途端、結局またExcelへ戻ります。
三つのExcelより、仕事の始点と終点を先に描く
画面や製品を選ぶ前に、見積がどの時点で受注になり、何をもって請求可能になるのかを一本の流れにします。注文書を受け取る会社もあれば、電話で数量が確定する会社もある。焼津の仕入先から商品が届いて初めて納期が決まる、といった商売もあります。営業が見積を出した後に現場で数量が変わり、事務が納品書だけを直し、経理は変更前の見積を見て請求する流れでは、各担当者が自分の仕事を正しく進めても最終金額は合いません。
ここで必要なのは、理想の流れではなく現在の事実です。営業、現場、事務、経理の順に、誰が入力し、誰が承認し、誰が締めるのかを書き出します。口頭で渡している箇所には、担当者名と受け渡す情報まで付けます。『事務がやる』だけでは設計できません。誰がやるかです。
最初の棚卸しで並べる情報
- 見積番号、受注番号、請求番号を同じ案件へ結び付ける方法
- 取引先名、請求先、担当者、納品先の使い分け
- 商品・作業名、数量、単位、単価、値引きの根拠
- 見積日、受注日、納品日、締日、支払期限
- 注文書、納品書、写真、メールなど判断の根拠になる資料
上書きする前に、番号・金額・相手先の正本を決める
同じ取引先が『株式会社あり』『株式会社なし』で二重登録されていたり、営業用の呼び名と請求書の宛名が違ったりするのは、現場では珍しくありません。どの値を正式なものとして使うか。これを正本と呼びます。先に取引先と商品をそろえ、単価と担当者も一つに決めます。正本が曖昧なまま移すと、古い表記ゆれまで新しい仕組みに持ち込むことになります。
金額の計算方法も要注意です。端数を明細ごとに処理するのか、請求書全体で処理するのか。値引きは単価を変えるのか、別の明細として残すのか。税率や端数処理の扱いは、自社の経理方針や専門家の確認を踏まえて固定します。
特に避けたいのが、見積ファイルを上書きして受注版にし、さらに請求版へ変える運用です。受注後に単価が変わったとき、最初に何を提示したか分からなくなるからです。版番号と変更理由を残します。元データは消しません。地味ですが、後日の確認がかなり楽になります。
赤字メモの付く案件こそ、先に処理方法を決める
通常案件は多くのシステムで扱えます。差が出るのは例外です。藤枝の現場分だけ先に納品する、追加作業は翌月へ回す、請求先だけ本社へ変える。こうしたケースを『そのとき考える』にすると、担当者ごとに処理が分かれます。
移行前に答えを用意したい例外
- 見積提出後の数量変更、単価変更、追加作業
- 一部受注、分納、納品前の先払い
- 複数の受注を一枚へまとめる請求、反対に分ける請求
- 取消、返品、値引き、請求後の訂正
- 同じ会社で納品先や請求先が複数ある場合
- 締め処理後に誤りが見つかった場合
各例外について、担当者、承認者、必要な証拠、元データの残し方を決めます。たとえば請求後の金額訂正なら、元の請求を消さず、取消や差額が追える形にする。分納なら、受注数量、納品済み数量、残数が同じ画面で一致する状態が必要です。
備考欄だけでは足りません。『分納』『追加受注』『請求保留』のように選べる状態を用意し、理由は別に記録する。検索や集計で拾えるからです。
移行テストは、月初のきれいな案件だけで終えない
古いExcelを全部そのまま入れる必要はありません。現役の取引先、未請求・未入金の案件、参照が必要な過去データを分け、保存だけする資料も決めます。対象期間は会社ごとに違うため、法令上の保存期間や税務上の扱いは顧問税理士などへ確認します。
試運転では、目安として直近一〜二か月分に加え、分納や訂正を含む十件前後を選びます。見るのは登録できたかだけではありません。照合はここまでやります。受注件数、請求金額、端数、未請求残が元資料と合うか。権限のない人が金額を確定できないか。検索で過去の見積までたどれるか。実際の担当者に操作してもらうと、設計時には見えなかった手戻りが出ます。
本切替の前には、一回の締め処理を並行で確認するのが一般的な目安です。ただし二重入力を長く続けると負担になり、かえって差異が増えます。照合する項目と終了日を先に決め、合わなかった案件だけ原因を残します。
相談では、今使っているExcelをそのまま見せてください
整理してから相談しよう、と考える必要はありません。セルの色、欄外のメモ、別シートへの転記にこそ、その会社の例外処理が表れています。NIR株式会社では、静岡の業務の流れを一緒に確認し、既存の仕組みで足りる部分と、個別開発が必要な部分を切り分けています。
二、三件の実データから詰まり方を確認するだけでも、必要な機能はかなり見えてきます。移行範囲や費用感を決める前の段階でも、システム導入・開発を無料で相談するから状況をお聞かせください。例外を先に表へ出してから、現場が戻らない移行順を組み立てます。